先日の14日午後13時頃、妙見谷で滑落事故があったことは、
金剛山へ回数登山しながらSNSなどを使いこなされてらっしゃる方の中ではすでに周知の事実。
ちょうどその日、事故が起きた妙見谷ルートで知人が事故直後の現場に出くわす。
自分はというと、百ヶ辻に集結していた多数の消防、救急、警察関係車両で
何事が起きたのか?と気になるつつも山頂へ。
山頂でも騒ぎになっており、ほどなく妙見谷から登ってきた知人などから事故を聞く。
その後、救出に難航しているとのことで様子見に千早本道を下山。
自衛隊道にさしかかったところでレスキューの様子を見守る。
気さくに応じてくれた消防隊長からいろいろ話を聞いた。
千早赤阪の消防隊員の中に、私が個人的にインスタをフォローしている男性がいる。
隊長によると、その彼が居ないと山の事がわかる人間が居ないとのことで、
とても頼りにしておられるようだ。
そんな彼が、まっさきに自衛隊道から現場へ駆け下りてくれたとおっしゃってた。
今回はそんな隊長自慢の金剛山に詳しい消防隊員の話ではなくて滑落事故だ。
メディアで取り上げられてなかったのは、たまたま情報が入って来なくて
キャッチできなかったとしても、
府警の事件・事故のお知らせにも
まるで無かった事のように?処理されているっぽいので、
第二、第三の事故が繰り返す可能性がある事例なので書き留めておくことに。
報道が無かったので、事故を知らなかった人がその後も多数、
事故の翌日以降に妙見谷を登っておられるレコが上がっている。
発生場所は、妙見谷ルートのザレ場。
いつぞやの風水害で山抜けしてしまった場所だ。
下から見上げるとなんとなく登って行けそうであるが、
ひとたびズルっと足を滑らせるとなすすべもなく、あちこちに浮いた石とともに滑落。
不思議なもので、人間、垂直の壁だと落ちたら終わりと思って恐れおののくのに、
少しでも傾斜があると転がるだけで滑り台のようにソフトランディングできると思いがち。
当事者は初めて妙見谷を登って来た方だそうで、妙見谷をザレ場まで遡行してくると
その上部には千早本道の自衛隊道が見えるので、そのまま登るのがルートなんだと
思ってしまったようである。
3人パーティで、女性、男性、女性の順でザレ場を登っており、
最後の女性だけ遅れをとっていたところ、
別の登山者から、ルートはそっちじゃないよと訂正されて本来のルートで山頂へ。
先に登った2人の男女には時すでに遅しで登って行ってしまった後。
その後、何が起きたのかは聞く人によって内容が異なり、
まるで伝言ゲームのように情報が変化していって正確には伝わらないので省略。
最初は念仏坂9合目で滑落事故発生!なんて情報が飛び交ってたらしい。
結果としてベテラン男性のほうが滑落し、先頭の女性は飛び出た岩につかまったまま
進退窮まっていたという。
そんな女性の救出はスムーズに行われ、見ていた知人によると、
なんと、底がほぼフラットな運動靴だったからありえないと驚いたという。
ベテラン男性はその女性を助けようとしての滑落だったとかで残念な結果になったが
転落してしばらくは意識があられたそうだ。
消防隊員は山岳救助隊ではない上に、傾斜のきついザレ場でのレスキューのため
困難を極め、最後まで見守っていたが、事故発生から延べ4時間かかって上げた。
なぜヘリを飛ばさなかったのかについては、ホバリングの難しい谷間である事等を含め
問うべきではないだろう。
落石の音がひっきりなしに続く中、長時間に渡ってレスキュー隊の方が一丸となって
非常にがんばっておられた。
最後は何度も何度も「隊員、がんばれー!」の隊長からの掛け声も。
そんな現場だけでなく、百ヶ辻(笠松駐車場前)では、
昼食も摂れないまま、昼から夕方まで立ち詰めで交通整理をされていた隊員の姿も。
怪我一つ無かったという2人の女性がレスキュー現場に居なかったのが不思議だった。
繰り返さないためにも少しでも教訓となれば。

救助に延べ3時間以上かかる中、一歩一歩、ゆっくり進む隊員に応援の声が飛ぶ

隊長から「隊員、がんばれ!」と繰り返し掛け声が飛ぶ。
50mザイルを3本つないで150mの長さに。
それらを2本垂らして下降、回収しながら上がる。
要救護者は自衛隊道から130m下だった。

現場はここ。(今年1月撮影)
下から見上げると本道を行く人が見えるので、ここを登ればいいんだなと思いがち。
傾斜も緩そうで、地面もやわらかそうで、なんとなく登れそうに思える。

十数メートル登ったところで急に傾斜がきつくなり、
これ以上登るとあちこちに浮きまくっている大きな石とともに転がっていきそう。
もう少し登ったところでさすがに限界を感じ、
尻セードで恐る恐る滑り降りるときに手袋を落とした。
中央やや右の飛び出た短い木の上部に黒い手袋が見える。
上から落石が落ちてきたら直撃を受けそうだ。

別の日にザレ場右手の植林帯から取り付いて、真横からアプローチして手袋を回収しようと、
3mくらいの枝を使って矢印先端の黒い影(手袋)にひっかけるまでは成功したものの
途中で落下して見えなくなって回収不能に。
この日はそのまま植林帯から自衛隊道によじ登った。
ザレ場左手植林帯には踏み跡や取り付きがあり、常用してる人も居るようだ。
しかしザレ場の中央突破は最低でも登攀具(ピッケル等)がなければ不可能だ。

真横から見るとこんなに急だ。(中央は手袋)
人は垂直じゃなきゃ恐怖感が無いのか?!
この時点ではまだ転がっても大した高低差が無い限界点だった。

サイドはこんな傾斜。
ひとたび滑ると勢いがついて下まで転落する。
奥の植林帯の中なら踏み跡があるのだが。。

赤色線が正規ルートのGPS軌跡。
茶色の塗りつぶし部分が現場の山抜け崩落箇所。