釈迦ヶ岳山頂の釈迦像
氷結の世界じっと立ってられないほどの冷たい強風が終始止まずでたいへんな寒さ。
存在しなかった一般登山道の実線に惑わされて迷走した。。(> <)空はどんより。
ゴーゴーと唸り音。冷たい風が吹き荒れる。
初の登山道ではいきなりロスト。
道なんて存在しないのにあの実線は何か?
薄暗い空とうなり音の中、さすがに不安で心細かった。
時間に余裕があったにもかかわらず強風のため目標は断念。
気温は-1℃であったが、風速10m以上の冷たい風。
単純に体感温度を計算すると-14℃くらいになる。
そんな寒さの中の山行きとなった。
【コース】
登山口(7:30)-(バリエーション)-1465ピーク合流(9:00)-古田の森-千丈平-釈迦ヶ岳(10:30-10:40)
-深仙の宿(11:20-13:30)-(破線ルート)-千丈平-古田の森-1465ピーク分岐(15:10)-登山口(16:05)
【今日の狙いどころと結果】
・太尾登山口ではないほうの登山口から登る →登りはロスト、下山で達成
・南奥駈道を行けるところまで行く →冷たい強風のため断念
・何らかの発見と出会い →2点(謎のありそうな岩と単独女性の行者さん)釈迦ヶ岳へのアクセスは、国道168号線からも長い。
しかもガードレールも満足に無い高所を行く上に崖沿いを走るので落石にも油断ならない。
途中、タクシーが前方を走っていた。どうやら登山者を乗せているようだ。
どこから乗って来られたのかわからないが、公共交通機関の走ってない時間帯だけに
高額な運賃がかかってそう。 よく見ると若い女性が1人乗っているようだ。
空はどんよりガスっていて、山中での視界が悪そうで雨が降ってもおかしくない。
昨日の長雨の一過で今日は絶好の晴天だと思っていただけにがっかり。
4週(4回)連続の悪天候である。
駐車場の広さも十分でトイレもキレイで釈迦ヶ岳への登山口としてすっかり定着している
太尾登山口から手前1.5kmの地点にある峠の登山口。
今日はここからのスタート。
以前、下山に使ったという山友が、明瞭な道を見つけられずに苦労したというルートだ。
山と高原地図にはハッキリと実線で示されている一般登山道があるはずである。
登りに使えば明らかになるだろうと思った。
準備を済ませて7時30分に登山開始。
まずは釈迦ヶ岳登山口と書かれている取り付きから明瞭な踏跡のある植林部を抜けると
そこはなかなか見事な苔の岩ゾーンだった。
そこからは踏み跡が無くなり、周りを見渡すがはっきりとした進行方向がわからないまま登って行くことに。
GPSを見ると、実線をすでに外しているようだが最初からそんな取り付きも道らしきも無かった。
山と高原地図には記載は無いがGPSの地図データ(TOPO10mPLUS)には黒い破線がある。
その破線の最後は、存在しないと思われる実線に合流しているようであったが、
実線のルートが存在しない以上、黒い破線の存在も怪しいものであると思ったので、
そのどちらでもない、実線と黒い破線の中央あたりで、歩きやすいところを探しながら
バリエーションルートで登ることにした。
最初は苔の岩ゾーンでそんなに苦労することもなく歩けていたが、
突破できそうにないブッシュが前方に立ちはだかり、左へ左へと巻くハメに。
空がどんより暗いので、森の中も同様に暗くて不気味である。
その後、また苔の岩ゾーンに出くわし、最後は急登をなんとか登っていると明瞭な道に出くわした。
これこそがGPS上にあった黒破線だった。
そんなこんなでその道に誘導されるように登り切ると1465ピークの太尾登山口からの合流ポイントから
手前100mほどは広くて開放感のある牧歌的な雰囲気。
あいにく展望は見れなかったが幻想的だった。(下山時は吹っ切れて展望あり)
さて、太尾登山口からの登山道に合流してからは稜線を歩く快適な登山道となるが
この稜線に出てからが強風の格好の餌食となる。
ガスっていて視界も悪く、このまま先へ進んでも何も得られないかもしれないからと
撤退し金剛山に行こうかとも考えたが、釈迦ヶ岳の釈迦像を久しぶりに仰いでみたいという思いもあったし、
こんな幻想的なところを歩くのも悪くない、と登山を続行。
同じく晴れになるだろうと思ってやってきたと思われる登山者数人と出会う。
それにしても西側から吹き付ける風が冷たい。
アップダウンを繰り返すトレールでも稜線の西側を行く部分は直接風に当たらないだけ寒さも和らぐ。
そんなこんなで汗をかくこともなく最後の登りを登り切って釈迦ヶ岳ピークに到着。
午前10時30分の事だった。
ピークには5名ほど登山者が居て、釈迦像の台座で風から逃れるようにしてお昼を摂ろうとしておられた。
風が最大限に吹きつけてさぞ寒いだろうと思っていたピークは
その台座のおかげで意外なことにそんなに寒くはなかった。
あいかわらずゴーゴーと空が唸っている。
ピークでお昼を摂っておられるくらいだから全員がこのピークで折り返して帰って行くと予想された。
撮影もそこそこに、余力たっぷりなので天気の回復を願いつつ深仙の宿へと向かう。
西側に向かうので強風も少しはマシかと思われたが帽子が飛ばされるくらいの突風。
釈迦ヶ岳から深仙の宿まではそんなに遠くない印象だったがなかなか到着しなくて遠く感じた。
人の感覚なんていい加減なものである。
途中、遭難者の多発する釈迦ヶ岳の東側(深仙の宿までのルートの北側)を覗いてみたくて
登山道から少しそれて覗き込むこと何度目だったか、意味ありげな壁を発見。
穴が開いていて向こうが見通せる。
その壁の先端に向かって、黒部の下ノ廊下よろしく岩をくりぬいてまるで通り道が作られたようになっている。
またそこまでのアプローチのような踏跡もあって裏側に回れそうで何か意味ありげな場所であった。
濃いガスに覆われていたので深仙の宿のすぐそばに近づくまで視認できなかったがようやく到着。
相変わらず風が強い。
避難小屋をいちおう覗きに行ってみるが、中は風が当たらなくて温かいもののいつもながら暗すぎる。
お堂の前は風も当たらなくて座る場所や屋根もあるのでそこでお昼を摂ることにする。
今回はトマト鍋なので新品のジェットボイルは出番なし。家に置いてきた。
気温はマイナス1℃程度ではあるが、残量半分以下のイワタニプリムスのイエローのガス缶は気化しにくい。
3つ持って行き、そのうちひとつはウィンターガスであったが、最初だけは勢いがあるものの
落ち着いてくるとすぐに弱火になってしまってそれ以上の火力が出ない。
そんなわけでずいぶんと時間のかかるお昼になってしまった。
濃霧で覆われたまま、大日岳のほうはゴーゴーと唸りを立てている状況で、
登山者が誰も来る様子の無い状況はともすれば不安になりそうであるが、
過去に何度も来ている場所だけにさすがに気が楽である。
そうこうしていると突然、避難小屋やからひとりの女性が出てきたのでびっくりした。
いつの間に入っていたのかまったく気付かなかった。
軽く会釈をした女性は目の前を通り過ぎて避難小屋とは反対の方向へ。
寒くないのか?と心配になるほどの軽装で30リットルくらいのザックを背負っていて
頭には筆で何やら文字が書かれた修験者?行者?の三度笠。
その後、まったく気配が感じられなくなったのでお堂の前方まで出て覗きこんでみると
突き当りには何かの石碑があるが、それよりも手前の石が3つほど積まれたところにしゃがみこんでいる。
あぐらをかいた状態なのか正座なのかよくわからない様子だったが拝んでいるようだ。
風が吹き荒れている状況で、お堂の前の風の当たらないところでも時折突風が吹き込み、
温かいものを食べていないとたちまちカラダが震えるというのに大丈夫だろうか?
どれくらい寒いかというと、いつもの冬ウェア(モンベルのジオラインのハーフジップ長袖に
長袖ハーフジップシャツ:金剛山の冬ではこれだけでも十分である)、その上には念の為にと持ってきた
内側に防風ライナーの付いたフリースであるモンベルのシャミースライニングジャケットを着て、
さらにアウターにモンベルのロッシュジャケットの計4枚を着た状態である。
それでも食べ終わって撤収作業をしていると見る見る体温が奪われて寒くてガチガチと歯が震えるほどであった。
ユニクロでもいいので厚手のダウンジャケットが欲しいなぁと思ったくらいであった。
ずいぶん時間が経って女性が戻ってきて、お堂の中に入らせてほしいとのことで
広げていたザックの中身を寄せて上がっていただいた。女性の靴と焼印の入った木の杖だけが残る。
扉を閉めると中の様子はまったくわからないし、中は真っ暗のはずである。
その後、10分以上そこに居たが物音ひとつせず出てくる様子もなかった。
時間は13時を過ぎ、天候も回復の兆しが無いのでこれ以上足を伸ばすのはやめて下山することにした。
撤収が終わってからも女性が出てきそうもないまま深仙の宿を後にした。
ミステリーっぽい書き方をしたが、ありのままの出来事であるし、この後にさらに疑問点を残すことになった。
気温-5℃以下の環境で生じる樹氷が風上側へ向かって羽根状に成長した海老の尻尾と呼ばれるものが、
強風に飛ばされ、まるでカッターナイフの刃がこちらに向かってくるようにピシパシと当たる。
これが顔に当たると切れて血が出てるんじゃないかと思うくらい痛い。
本来は休憩が終わると行動のために脱ぐはずの防寒着は寒くて脱げないまま行動開始。
帰りは来たルートを通らない、山と高原地図では破線ルートになっているトラバースである。
踏み跡に注意していないと
以前にはおしゃべりに夢中になっていてロストしたことに気づくのに遅れてしまい、
実際のルートよりずいぶん下に行ってしまった苦い経験もある。
かくし水のあるテント場まではほどなく到着。
そこからは先は来たときよりも白くなっている感じで氷結の世界である。
古田の森を過ぎてさらに歩いて1465ピークまであと少しというところまで戻ってきたところで
ガスや雲が急に吹っ切れて太陽の日差しも降り注いできた。
行きたかった南奥駆の稜線もハッキリくっきり見えたのでしばしボケ~っと眺める。
それでも暴風は止むこと無くカラダに容赦なく吹きつけて体温を奪わんとする。
寒さきびしくなってきたので下山再開。
そんなかんやで1465ピークまで戻るとすっかり吹っ切れて展望が見れるまでになったので、
太尾登山口に下山して舗装路を1.5km歩いて車まで戻ろうと思っていた計画を変更し、
登りでルートロスしたのを再確認するため黒破線を歩いてみることにした。
黒破線に忠実な明瞭な踏跡は、実にスムーズにどんどんと進んで行ける。
といっても最近人が歩いたような形跡がまったく無いようで少し荒れた道ではあった。
右に沢の音が聞こえてきて舗装林道が近づいてきた。
いったいどこに合流するのか楽しみにしていると、登りでロストした苔の岩ゾーンに合流した。
よく気をつけて眺めると古い変色したテープがあるにはあるがこれにはさすがに気付かなかった。
下山完了は16時5分のことであった。
持ってきていたお汁粉と餅で休憩し、気になっていた実線ルートの取り付きが
本当に存在するのかもう一度確認してみたがやはりそれらしいところは無かった。
その後、車で太尾登山口まで舗装林道を登り返して登山者の車を確認に行ってみたら一台も無かった。
となると、あの女性はタクシーで来た人物か?でもタクシーの女性とは特徴も年齢も違っていたように思う。
仮にタクシーで来た女性だとすると、午後13時半を過ぎてあの後あの軽装でどこへ行ったのか?
避難小屋に泊まるとしても推定30リットルのザックにシュラフが入っているとは思えなかった。
楊枝の宿まで移動したのか?あの強風の悪天候で?
いやここは単純に太尾登山口にタクシーの送迎を頼んであって、それに乗って帰ったのかも。
しかし日没後に帰って行く途中で、登っていく車やタクシーとは1台もすれ違わなかった。
そんなミステリアスな想像力をかき立てるような出来事があった山行きであった。
そろそろ金剛山が恋しくなってきた。
その他の写真は以下より。

GPS軌跡+山と高原地図 for iPhone

GPS軌跡+地形図 ※赤い矢印部分はバリエーションルートであって登山道ではない。

峠の登山道の取り付き

少し登って振り返って見下ろしたところ

熊の爪跡?? 矢印の方向に明瞭な踏跡があるが・・

少しだけ植林地帯がある

苔の岩ゾーン ここから進むべき方向がわからなくなってロスト

こんな感じでだんだんと心細くなる。。

GPSを頼りに、黒破線と赤い実線ルート(存在しない)の間を行く

こんなところもあって心細さピークに。

どうにかこうにか明瞭な踏跡に出た。(これが黒破線ルート)

空はどんより物悲しいムード

太尾登山口からの登山道まであと少し。


1465ピーク(太尾登山口からの登山道との合流ポイント)

歩きなれたルートの稜線歩きであるが空模様が最悪。




千丈平



キャンプ適地のテント場の近くにある「かくし水」は潤沢に出ていた。

釈迦ヶ岳ピーク直前

釈迦ヶ岳ピークにて



深仙の宿に向けて

何やら謎めいた壁。矢印方向に歩けそうだ。裏側に何があるのだろうか。

深仙の宿のお堂

気温は-1℃~0℃であるが風速10m以上の暴風で体感温度は-10℃以下

破線ルートでトラバース

ワイルドな橋は滑りそう。


エビの尻尾 これがすごいスピードで飛んで来る。

イヤーパッドで暖かくなった。


1465ピーク直前で空の雲が吹っ切れてきた。

当初計画で行きたかった南奥駈の稜線(天狗山)

1465Pの分岐を経て下山途中。

こんな案内板もあるからして黒破線が旧登山道か?!

「旭→」とある。

下山完了。(16:05)